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生命保険は遺産分割の対象になるのか

  • 文責:弁護士 上田佳孝
  • 最終更新日:2023年10月4日

1 生命保険の性質

生命保険は、契約内容により受取人の名義になっている人に払い戻されます。

そのため、保険金を受け取るにあたっては、遺産分割を行う必要はありません。

名義人が被相続人(亡くなった方)の名前になっていたり、「相続人」とだけ書かれていたりする場合には、誰が受取人になるかについて保険証書や契約内容等をよく確認する必要はありますが、遺産分割協議で誰がいくら受け取るかを決めるということはあまりありません。

2 生命保険を受け取った人の相続分が少なくなる場合

生命保険を受け取った場合でも、原則としては、その人の相続における取り分は減りません。

もっとも、遺産の総額に対して、受け取った保険金の金額が大きい場合には、「特別受益」としてその人の相続分の取り分を減らした例があります。

「特別受益」というのは、ひとことで言うと、「遺産の一部を先にもらったことにする」という考え方です。

例えば、相続人の一人がまとまった金銭の贈与や不動産の贈与を受けていた場合に、その贈与を単なる贈与ではなく、法的には「遺産の一部を先にもらった」と考えることがあります。

3 死亡保険金が「特別受益」となった例

死亡保険金を特別受益と認めた最高裁の判決(最二小決平成16年10月29日(民集58巻7号1979頁))は、次のように述べています。

参考リンク:最高裁判所判例集

「死亡保険金は,民法903条1項に規定する遺贈又は贈与に係る財産(=特別受益)には当たらないと解するのが相当である。」

この通り、死亡保険金が原則として特別受益ではないことを確認しています。

しかし、これに続けて、

「死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は,被相続人が生前保険者に支払ったものであり,保険契約者である被相続人の死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると,保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には,同条の類推適用により,当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である。」

として、被相続人が支払った保険料により相続人が保険金を手に入れるという点を考慮して、相続人間に著しい不公平が存在する場合に保険金を特別受益として扱うことを認めています。

何をもって「不公平が~著しい」場合にあたるのかについては、明確な数字による基準があるわけではありませんが、過去の裁判例においては、遺産総額が8423万円であるときに、遺産とは別に5154万円の生命保険を受け取った場合に特別受益であることを認めた例(名古屋高決平成18年3月27日(家月58巻10号66頁))もあります。

4 生命保険に入る場合は弁護士に相談を

生命保険に加入することには、相続税を軽減する等、様々なメリットがあります。

しかし、上記でご説明したとおり、生命保険の内容によっては、相続人同士で紛争が起きる可能性があります。

どの程度の死亡保険金が、「特別受益」に該当するのかということについては、弁護士に相談することをお勧めします。

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